Interview

「Twitterマーケの飯髙」から「ギフトの革命児」へ。「選び直せる」で挑む、10兆円ギフト市場の再定義

「Twitterマーケの飯髙」から「ギフトの革命児」へ。「選び直せる」で挑む、10兆円ギフト市場の再定義

「Twitter(現:X)マーケティングといえばホットリンク」という圧倒的な第一想起を作り上げ、現在はギフト市場で新たな体験価値を提案する飯髙悠太氏。

なぜ彼は、誰もが気づかなかった「勝ち筋」を見つけられるのか。

なぜ、あそこまで市場を熱狂させることができたのか。

その裏側にあったのは、徹底したデータ分析と、人間臭い泥臭さ、そして「半身ずらす」という独自の感覚だった。EXIDEA塩口が、その思考の源泉に迫る。


出演者

飯髙 悠太(いいたか ゆうた)
株式会社GiftX 代表取締役

Interviewee株式会社GiftX 代表取締役
飯髙 悠太(いいたか ゆうた)

広告代理店などを経て、2014年ベーシック入社。「ferret」創刊編集長としてメディアを成長させる。2019年ホットリンク入社、執行役員CMOに就任。Twitter(現X)マーケティングの第一人者としてUGC活用のメソッド「ULSSAS(ウルサス)」を提唱。2022年、株式会社GiftXを創業し、選び直せるソーシャルギフトサービス「GIFTFUL」を展開。著書に『僕らはSNSでモノを買う』など。

Interviewer株式会社EXIDEA 取締役副社長 COO
塩口 哲平(しおぐち てっぺい)

新卒でコンサルティングファームのトーマツグループに入社。中小ベンチャー企業の組織開発や人材コンサルティングを実施する。その後、2015年に動画マーケティング会社の株式会社プルークスを共同創業し取締役に就任する。2017年にJapan Youtube Ads Leaderboardを受賞。EXIDEAでは、スタートアップから大企業までBtoBマーケティング・ブランディング支援を行う。


ツールベンダーから「Twitter支援」へ。勝てる場所しか選ばない

塩口 今日は飯髙さんがどうやって「カテゴリー」というか、ソートリーダーとしてのポジションを築いてこられたのか、その裏側を伺いたいと思っています。ホットリンク時代、飯髙さんが入られてから一気に「Twitterマーケティング=ホットリンク、飯髙さん」というイメージがつきましたよね。あれは最初から意図していたんですか?

飯髙 意図してやってましたね。当時、どこの会社も「いろんなプラットフォーム使えますよ」というスタンスだったんですけど、ホットリンクは完全に「Twitter × UGC」というキーワードに絞りました。当時、「UGC」という言葉自体は流通していたけれど、みんなよく分かっていない状態だったので、あえてそこを突いて露出を増やしていきました。

塩口 入社された2019年当時、Twitterに特化しようとなったきっかけは何だったんですか?

飯髙 もともとホットリンクは「クチコミ@係長」という分析ツールの会社でした。データはあるから強みはあるんだけど、支援会社としては分かりづらい。そこで、僕が入るタイミングで「勝ち筋が見えたから一点突破で行こう」と、完全にTwitterに振り切ることにしたんです。

塩口 「勝ち筋が見えた」というのは、具体的にどういうことだったんでしょう?

飯髙 結局、「人はUGC(クチコミ)でモノを買っているよね」という原点です。自分たちの実体験でも分かっていたし、データを見ても明らかでした。だから、支援するお客様も最初は「BtoC」で、かつ「UGCが出やすい商材」しかやらないと決めていました。

塩口 かなり絞り込んでいたんですね。

飯髙 そうです。「絶対に成功する」と分かっているところしか支援しない。一番分かりやすいのは、手に取る回数が多い商品です。例えばシャトレーゼさんのような、日常で写真を撮ってあげる機会が多いもの。逆に、車やバイクのような高額商品はSNSでのUGCマーケティングは難しいので、お断りしていました。ただこれは当時の話でして、途中からはUGCが出づらい会社様でも、どうUGCを増やすかはわかったので支援するようになりました。

塩口 それはなぜですか?

飯髙 購買回数が少ないし、高い車に乗っていることって、SNSであまり言わないじゃないですか。顕示欲が強めに見えちゃうので(笑)。だから、買う頻度が高くて、あげる理由がある商材に絞りました。

「フォロワー数」は意味がない? データの裏側に見えた真実

塩口 当時、他のSNS支援会社はどういうやり方が主流だったんですか?

飯髙 当時はまだ「フォロー&リツイートキャンペーン」を実施して、フォロワーを増やすのが主流でした。でも、ホットリンクはデータを持っているので、キャンペーンで増えたフォロワーの中身が見えるんです。

塩口 中身、ですか。

飯髙 はい。分析してみると、フォロワーの6割が「懸賞用アカウント」だったりするんです。実在するファンはほとんどいない。「見栄えはいいけど、これ意味ないよね」と分かっていたので、僕らはUGCを積み上げることと、「良質なフォロワー」を増やすことに集中しました。

塩口 飯髙さんが考える「良質なフォロワー」ってどういう定義なんですか?

飯髙 一つは「投稿回数が多い人」。もう一つ重要なのが、「フォロワー数が多すぎない人」です。フォローとフォロワーの関係が350人以下とか、そういう人がめちゃくちゃいいんですよ。

塩口 確かに、当時そうおっしゃってましたね。

飯髙 そういう人たちって、地元の友達とか大学の同級生とか、リアルなコミュニティで繋がっているんです。だから、そこで「この商品よかったよ」って投稿されると、「それ何?」って会話が生まれる。一番いいのは、投稿数は何万といってるのに、友達が50人しかいないような人。そのタイムラインにおける「学級委員長」みたいな人ですね。そういう人が投稿してくれると、購買が起こりやすいんです。

塩口 なるほど。それを裏側のデータ分析で見つけて、ロジックを組んでいたわけですね。

飯髙 そうです。ホットリンクには研究者がいるので、そのロジックが合っているかをデータで検証してもらっていました。

「ノミナー」の衝撃。あえて“半身ずらす”仕掛け方

塩口 そうやって確実な勝ち筋を見つけた上で、どうやってそのポジションを世の中に広めていったんですか?

飯髙 僕個人で言うと、とにかく露出を増やしました。ただ、普通にやっても面白くないので、あえて「半身ずらす」ことを意識していました。

塩口 半身ずらす?

飯髙 例えば、当時やった「ノミナー」というイベント。これ、「飲み」と「セミナー」を掛け合わせただけなんですけど(笑)。登壇者がイベントの前に集まって話ながら軽く飲んで、ほろ酔い状態でステージに上がるんです。

塩口 ありましたね(笑)。

飯髙 で、お客さんに「今80人いますね。ハッシュタグで80投稿出ないと始めません」とか言うんですよ(笑)。そうすると、みんな面白がって投稿してくれる。終わる頃には500投稿くらいいってるんです。「ホットリンクのセミナーに参加しました」とは誰も書かないけど、「ノミナーに参加してる」なら言いたいじゃないですか。

塩口 確かに(笑)。そこまで計算していたんですね。

飯髙 そうです。BtoB企業がサービス名をSNSで言ってもらうのはハードルが高いけど、イベントへの参加なら言及してくれる。そうやって「Twitterといえばホットリンク」という想起を作っていきました。コロナ禍になった瞬間に仕掛けた「#NewWorld2020」というオンラインイベントもそうですね。あれも企画からリリースまで3、4日でやって、1週間でUGCが7000件以上出ました。

塩口 すごいスピード感ですね。

飯髙 あの時は「今だからこそ」仕掛けられると思ったんです。みんな不安だし、どうなるか分からない。だからこそ大きな旗を振った。やってることは「イベント」や「書籍出版」といった王道なんですけど、そこに少しのエッセンス、違和感を加えることでUGCが出るように設計していました。

塩口 書籍『僕らはSNSでモノを買う』の時も、プロモーションが独特でしたよね。

飯髙 あの時は「全国行脚します」と言って、交通費と宿泊費をいただけたら無償で登壇しますと宣言しました。年間で200回くらい登壇したんじゃないですかね。

塩口 200回! それは企業向けですか?

飯髙 企業もあれば、地方のイベントもあります。地方に行って熱量を持って喋れば、そこに来た100人が投稿してくれる。それを僕がリポストしてフォローしに行くと、繋がりができる。

僕が狙っていたのは、俗にいうインフルエンサーのような「数」ではなく「濃度」なんです。僕が投稿した時に、その奥にいる友人たちにまで届くような、濃い輪を日本中に作りたかった。

10兆円市場の「負」を解消する。ギフトへの挑戦

塩口 そこから、なぜ次は「ギフト」だったんでしょうか?

飯髙 きっかけはコロナ禍で、40歳を前に「もう一回チャレンジしたい」と思ったことですね共同代表の石塚と話している中で、ギフト市場に行き着きました。日本のギフト市場って10兆円もある巨大市場なんですけど、体験として「要らないものをもらう」ことも多いじゃないですか。実態として約2.3兆円が好みでないギフトなんです。

塩口 確かに、カタログギフトをもらったけど期限切れにしちゃうこと、よくあります。

飯髙 そう、受け取り手の20%くらいは期限切れになってるというデータもあるんです。送り方を含め便利にはなっているけど、まだまだ「ギフトの課題は大きい」と思っているんです。つまりギフトの選択肢は増えたけど、体験は変わっていないということ。そこで僕らが作ったのが「GIFTFUL」という、受け取り手が選び直せるサービスです。

塩口 贈り手が選んだものを、受け取り手が変えられるというのは新しいですよね。

飯髙 特に法人で使うと効果的なんです。企業のキャンペーンや手土産などって、どうしても好みがわからないし選ぶのも時間がかかる。結果的に無難なものになりがちじゃないですか。でも、「選び直せる」という体験がつくだけで、「あそこのギフトいいよね」という会話が生まれる。

受け取った分しかお金がかからないし、データも取れる。そうすれば企業はもっと一社あたりにコストをかけられて、体験価値も上がる。テクノロジーが伸びた今だからこそ、最後は「感情」や「インテント(意図)」が大事になると思って設計しました。要は人間らしさですね。

約3年前に個人版をリリースし、今年2026年1月27日に「最高のギフト体験を、最小の工数で。」をテーマにGIFTFUL for businessをリリースしました。法人版をリリースする前に150社様以上にご導入いただいており、活用シーンや使い方など含め検証しリリースに至っております。

塩口 ここでも、Twitter時代と同じように「当たり前」に対する逆張りというか、ペインの解消を狙っているんですね。

飯髙 そうですね。僕らは「ギフトを贈る時に唯一、指名で選ばれるサービス」になれると思っています。他のサービスは「この商品があるから送ろう」ですけど、僕らは「GIFTFULだから送ろう」になりたい。

すべては「自分だったらどうするか?」から始まる

塩口 お話を聞いていると、飯髙さんは常にユーザー視点というか、一般の方々の目線で物事を考えているのが印象的です。

飯髙 そうかもしれないですね。「企業の担当者として」とかじゃなくて、「自分だったらどうするか?」を憑依させているだけかもしれません。街中の広告を見て「これ誰に届けてるんだろう?」って考えたり、電車の中の人の動きを見たり。そういう日常でできることを意識してやっています。

塩口 答えのない問いを自分で考え続ける、ということですね。

飯髙 そうです。そうすると、いざ支援する時にも「このターゲットならこうしませんか?」って言えるようになる。

Twitterなら「人はどういう時に投稿したくなるのか」。ギフトなら「もらった瞬間にどう感じるか」。結局、そこを突き詰めることが一番の近道な気がしますね。

今後はアスクルやAmazonのように、1社1アカウントGIFTFULアカウントを持っていて、贈りたい時にすぐに良いギフト体験が贈れる世界を目指しています!

塩口 なるほど。カテゴリーを作るというのは、難しいフレームワークの話ではなく、徹底的なユーザー視点と、少しの「違和感」を作ることなんですね。今日はありがとうございました。